●盗人川唯一の支流・福角川の巻

 

 以前ご紹介を致しました神戸市灘区の珍名河川・盗人川..小さな流れながらも囁きのようなせせらぎを街に響かせる愛すべき存在でありましたが、此処に流入する唯一の支流(側溝や小さな排水路の類は除く)がございます。やはり盗人とほぼ同規模の小河川でして、実際に探索してみるとこれがまた盗人に負けず劣らずの味わい深い河川でしたので、是非にご紹介致したく。。盗人よりも更に生活密着型河川といった佇まいで、個人的にとても好きな雰囲気なのでした。

 

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 場所は阪急王子公園駅から徒歩15分の天城通1丁目、ちょうどこの線路の下が福角川の源流部になります。気づかずに素通りしてしまいそうになりますが、フェンスの途切れめに下へ降りる小さな階段が見えます。線路は高架線ではないのですが、地形が傾斜しており線路の北側と南側で道路の高さが違うため、階段を使って反対側の道路へ出られるような構造になっているのでした。そう、此処は坂のある街..坂道や細い路地というのはしばしば独特の景観を生みます。それが灘区の街を趣深いものにしている要因の1つかも知れません。小さな路地は緊急時に車両が入れない等の理由で近年では整備されてしまうのが常ですが、このあたりはまだ昔日の面影を色濃く残していて..人がそういったものに惹かれるのは、年月を経たものだけが持つ事の出来る"重み"のようなものがあるからではないでしょうか。関係無いですが、個人的に尾道市なんかもかなり好きな街です。。

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 フェンスの上から河床部を見下ろしたところ。幾度となくこの場所を訪れておりますけれども、此処に水が流れているところを私は未だ嘗て見たことがありません。。雨の日でもあまり変わりありませんでした。よほど激しい豪雨になればどうか分かりませんが。河床部はいつもこのように乾いている状態で、一見して河川とは判別できない代物ですね。。。しかしどういう訳だか辺りは厳重にフェンスが張り巡らされていて河川には容易に近づけないようになっております。

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 さて、この狭い階段を降りる訳です..一瞬、降りられるのかどうか、また降りていいものかどうか躊躇われますが、此処はれっきとした生活道路。ご覧のように線路が本当にすぐ近くにあるので、電車が通過している時はかなり恐ろしいです。

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 下に降りたところです。この突き当たりの謎の洞窟が源流部..この穴は一体何処に通じているのか??気になったので、洞窟の中をフラッシュ撮影してみました。中は一見行き止まりのように見えますが、よ〜く見ると上から水が落ちて来るようになっているようにも見えます。上から排水管が通っているのかも知れません。。

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 源流部の上、阪急を背にして反対側の道路を見たところですが、ご覧のように河川の跡は全くありません。。おそらく周辺の側溝から河川に水が流れ込むようになっているのではないでしょうか。もしも元々此処から先に流路があったとすれば、相当昔に廃川化されたものと思われます。四角い大き目のマンホールがちょっと気になります、、流路跡か?

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 阪急電車の橋台に"福角川橋梁"の文字..という訳で此処が"福角川"という河川である事が分かるのですけれど、これが唯一の河川名表示ですので、この表示が無ければ分からないところでした。考えてみれば橋梁名の表示というのもナカナカ貴重なものかも。地名では福住と書くのですが表記が違うのはどうしてなんでしょうか。しかしこの場所、頭上の結構近いところをモノスゴイ勢いで轟音と共に電車が通過して行くので、かなり落ち着かないです。味のある場所ではありますが、あまり長くいたくはないですね。。おそらく阪急電車開業以来ずっと変わっていないのでしょうけれど、昔の建造物というのは現在と違って全体的に規模が小さいのが特徴。今ほどに身長の高い人もきっといなかったのでしょうね。
 −さて、それでは此処から福角川の小さな流れを辿ってまいりましょう。。

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 ガード下からすぐに川はトンネルを潜り、道路を斜めに横切ります。またもや中をフラッシュ撮影してみましたが↓、大きく右へ屈曲しているのが分かります。この部分は石造りの護岸がそのまま残っているようです。ちなみに河床部に石組みが残っているのは此処だけで、他の場所は全てコンクリート敷になっておりました。おそらくは狭いトンネル内部なので、工事されることが無かったのでしょう。依然として水は全くありません。。

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 住宅の隙間を抜け、最初の開口部が此処。やはり此処にも水はありませんが、僅かに"染み"が見られます(笑)。上には植木鉢がたくさん置かれていますが、これは橋ではなく付近の住宅用の通路となっているもの。先ほどの道路から此処までは河川に蓋をした状態になっている訳です。

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 その先はまたまたトンネル状態..トンネルというか暗渠ではなくてこれも通路というか物置というか、そんな感じです。この部分だけ川幅がかなり広く見えますね。河床部の"染み"の出来具合を見るに、此の辺りからは普段少しは水が流れることがあるのかも知れません。河床部に堆積した僅かの土砂から草が生えており、流れる水が殆ど無いことを物語っております。。

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 次の開口部。取り壊された住宅用に架けられていた小さな橋が見えます。この橋を渡る人はもう誰もいないのでしょうか。。石造りの護岸も健在で、雨樋が幾つも口を開けており、小さな排水口も見えます。住宅地の中を縫うように流路は屈曲を続けておりますが、ここへ来てようやく水があるのが確認できました。やはり此処は紛れも無く"河川"であったのだと改めて思わされます。単なるの水たまりのようにも見えますが。。

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 先ほどの屈曲の先から上流部を振り返って見たところ。"THE・日常生活"といった雰囲気で、生活臭がプンプンします。此処に清流がサラサラ流れていればきっと随分と雰囲気も変わるでしょうが、これはこれで味わいのある光景ではあります。。

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 小さな滝を超えて、いよいよ街の中心部へと流れ出します。。

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 と、思いきや再び水が無くなってしまいました。。河床部に僅かに水の痕跡が残るのみとなっておりますが、どうやら勢いよく流れ出すには水量が圧倒的に足りないようです。金属製の小さな橋が架かっております。

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 この場所もいつ来てもこんな感じで水が全くありません。雨が降ると中央にその痕跡が示すように僅かに水が流れるのかも知れませんが。。

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 狭い路地、旧いアパート、そして屈曲して流れるコンクリート河川..とても"昭和"を感じる空間です。『三丁目の夕陽』の映画の撮影がリアルで出来そう。ナゼか片側だけに石垣風の旧い護岸が残っておりますが、元々あった河川の幅をいくらか縮めたのでしょうか。

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 S字カーブを超えると、福角川唯一の有名橋・中倉橋です。ちゃんと銘板もありました。しかし銘板はこの1枚のみで、竣工年月日や河川名の表示はありません。こんな小さな橋に例え1枚でも銘板が入っているだけで奇跡的なことではありますが、1枚のみというのはやはり経費削減でしょうか。。川をキレイに、という主旨の看板が幾つか立てられておりますが、その効果かどうか河川にゴミの散乱は見られません。近年ゴミのポイ捨ては何処も全体的に減っているように思います。
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 中倉橋から下流部を見たところです。更に小さな滝を越えますが、この滝の先からは左側の隣接するクリーニング店からの排水が常にあり、河床部を水が浸している状態に。今度こそ河川らしくなって来たかな、という感じです。逆に言うと、現在の福角川は殆どこのクリーニング店の排水路と化している状態な訳ですが。。出来ればこの滝を水が落ちているところが見てみたいものです。いじらしくも繊細なせせらぎが聴こえることでしょう。

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 道路を潜って抜けた先には豊丸稲荷の朱い鳥居が下町っぽい風情を醸し出しておりました。このあたりはいつも猫がのんびり佇んでいることが多く、もうすっかり自分の庭のように昼寝をしたりして寛いでおります。河川に生活排水が流入しまくっているという訳でもないので、一応水はキレイに見えますね。。川面に落ちた枯葉が季節感を醸し出しております。街中でもほんの少しの緑と、こんな小さな河川だけでも季節を感じることが出来るものなのですね。蛇行して流れる細い水路、朱塗りの稲荷社、生い茂る樹木、コンクリートに緑と朱のコントラスト..この絶妙のバランス、完璧な光景です。間違いなく福角川のハイライトスポットでしょう。

fuku26.jpg (14823 バイト) 川面のアップfuku31.jpg (7735 バイト) 豊丸稲荷のぬし。。こっち向いて..くれません

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 豊丸稲荷の下で蛇腹の暗渠が口を開けておりますが、此処が福角川としての最期の開口部となります。これ以降、盗人川と合流するまで川が地上に出る事はありません。。再び陽の目をみるのはJRのトンネルの先です。嗚呼、さようなら福角川の水たちよ..今度会う時はもう"盗人川"なんだね(笑)

 

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 豊丸稲荷の先の暗渠部分。河川にそのままコンクリートの蓋をした状態が続いているのが見えます。この突き当たりの壁の先にちょうど畑原市場の細いアーケードの通りがありますが、川は其処を横切って先へと続いております。

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 畑原市場のアーケードを出て来たところ。突き当たりがアーケードの壁で画像の手前側が下流部です。またしても厳重に両岸をフェンスで覆われておりますが、不法占拠防止の為でしょうか。どう考えてもそんな危険な場所という訳では無さそうですし、開渠部分よりも厳重に囲われてしまっていて、何れにしても随分と物々しい様相ではあります。アルファルトで舗装されてしまうこともなく、一目瞭然に河川跡と判る雰囲気。河川があった頃の名残をそのまま残していますね。暗渠になってしまっているのは本当に残念..付近に住んでおられる方にとってはその方がいいのかも知れませんが。。

 

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 こちらはそのまま下流方向を見たところ。この先、家の下を潜ってすぐに道路に出ます。

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 住宅地を抜けて、広い道路に出ました。アスファルトでキレイに舗装されてしまっておりますが、この歩道の部分が河川跡です。半年ほど前に訪れた際、ちょうどこの歩道の舗装工事をしているところに遭遇したのですが、何と暗渠になった河川の蓋を開けた状態になっていたのを工事用フェンス越しに目撃して、一気にテンションが高くなった私でした。普段ならば絶対に見ること出来ない光景なのでかなりドキドキしました。その時は残念ながら携帯電話の写メしか持っておりませんでしたので撮影はしなかったのですが、無理にでも撮っておけばよかったかな、とちょっと後悔。おそらくはもう2度と見られないでしょうから。。ちなみに暗渠内部は暗くてよくは見えなかったのですが、太い塩ビパイプが通っていたのが確認出来ました。豊丸稲荷の下で口を開けていた暗渠とちょうど同じくらいの太さのパイプでしたので、中に水を通しているのだと思います。それをのぞけば、本当に河川の上にそのまま蓋をしただけの状態のようでして、合流式下水道に変えられているなどといった事はありませんでした。

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 河川跡に建つ建物と歩道部分とのほんの少し開いた隙間から無理矢理川面をのぞいてみました。太い塩ビパイプが通っているのが見えるでしょうか。。川はこのまま山手幹線の道路を渡り、渡った先にも同規模の歩道となって続いておりますが、そのすぐ先の公園で右に屈曲して暗渠が続いております。

 

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 これが屈曲の先..一瞬開渠になっているのかと近づいてみればこの光景。。このように蓋をされた河川が姿を現しておりました。ちょっと独特の光景ですね。もしかしたら畑原市場の先からこのあたりまでの暗渠化はそんなに遠い昔のことではないのかも知れません。コンクリート自体も、そして張り巡らされたフェンスもそれほど旧いものには見えませんから。今から十数年ほど前には水が流れている姿が見られたのかも。。

 

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 暫くすると左へ屈曲、屈曲の先は下り坂になっておりまして、ちょうど屈曲部付近に下へ降りる階段がありました。階段の入り口には現在は鍵がかけられていて入れなくなっておりますが、嘗ては水辺を歩くことが出来たのでしょうか..もしもそうならさぞや良い雰囲気の場所だったことでしょうね。右側に見えるのが素佐男神社。神社の横を大蛇の如くのたうちながら暗渠となって流れて逝きます。

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 素佐男神社の正面に廻って上流部を見たところ。この部分は本当に河川にコンクリートの蓋を被せただけのようで..カンタンに取り外しも出来そうです。コンクリの上に小さなマンホール蓋もありますが、開けると川面が見られるのでしょうか..ドキドキ
 何でもこの河川、嘗ては"大田川"と呼ばれたかなりの暴れ川だったらしく(そのもっと昔は"貧乏川"とよばれていたことも→現在貧乏川は別の場所を流れています)、付近の地域ではたびたび水害に悩まされそうで、この神社にも水神様が祀られているのだとか。せっかく神社にもそんないわれがあるのなら、せめてこの部分だけでも河川を開渠にして神社と共に地域の歴史として紹介しても面白いかも知れませんのに。境内の樹々とも相俟ってきっと良い風情の場所になるのではないかと思うのですが。。しかし鍵のかけられた階段といい、コンクリート蓋といい、源流部と畑原市場南側の厳重過ぎるくらいに厳重に張り巡らされたフェンスといい、何だかモノスゴイ警戒振りなのですが、これも暴れ川だったことの名残でしょうか。それだけ忌み嫌われているということなのか..何れにしても今ではすっかりコンクリートで蓋をされて見る影もありませんが。。

 さて、コンクリート状態の河川とも愈々此処でお別れ。此処から先は残念ながら河川の痕跡は全く無くなってしまいます。流路は此処から南へ屈曲、そのまま中央筋を南流し灘北通で西に屈曲、灘北通に沿って流れそのまま盗人川に合流となるようです。−ようですというのは、素佐男神社から先はすっかりアスファルトの道路に吸収されて河川跡は全く判別できない状態になっている訳ですので、予備知識無しで流路の特定は不可能。暗渠になったのはいつ頃のことなんだろうか。。

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 盗人川は泉東橋の先で暗渠になっておりますが、その少し先のアスファルトの下に福角川との合流点があるという事になります。盗人川の項で、JRを超えるトンネルを出て来る時には川幅が急に広くなっているので、中で別の流れを併せているのかも?と以前書きましたが、本当にそうだったようです。盗人川との合流点はこの暗渠の中..この中で一体どのようになっているのか、真実はこの闇の奥に..なんて。中を探索してみたい気もしますけれど、やはり此処はチト無理か。。

 

福角川・完

 

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