◆塚口水路めぐり〜昆陽川分流点を訊ねて

 梅田から阪急電車に乗って高架の上から街の風景を眺めていると、塚口駅に到着する少し手前で非常に味のある河川の分流点が見えるのがいつも気になっておりました。密集した住宅地の建物の裏を器用に通って流れる流路..それはまるで都市という体内を細く巡る静脈のよう。。そんな訳でよく晴れた或る晩秋の昼下がり、その分流点を見に行くつもりで電車を降りた私は、この旧い街並をデジタルカメラ片手に巡っていた訳です。しかし改めて見てみるにその街並の中をモノスゴイ屈曲・分流・合流を繰り返して流れる網の目のように張り巡らされた水路群に驚きと感動を禁じ得ませんでした。思うにこれらの水路群の多くは嘗て田畑を潤す用水路の役割を果たすものであったり、また生活排水を流す為のものであったのでしょうが、何れにしても近年ではその用途が失われるにつれ、通常都市化に際して暗渠化か或いは埋められ、果ては味気の無い道路になってしまう運命にあるものです。それが忘れられた状態でもそのまま現存している..それだけでも旧い街並やアスファルトで舗装されていない道路と同様に貴重な存在であるといえるでしょう。

 

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 さて、その分流点が此処です。写真の奥が上流、手前が下流になるのですが、住宅地の中だというのにご覧のようなモノスゴイ屈曲です。此の場所まで屈曲して流れて来た昆陽川(こやがわ)は、此処で分岐して写真手前の昆陽川と奥の上坂部川(かみさかべがわ)とに分かれます。ちょうど屈曲点で分岐になっているのでこの写真ではちょっと判りづらいかも知れません。。ので、角度を色々と変えながら此の分流点をじっくり観察したいと思います。

koya16.jpg (121102 バイト)  今度は分流点を上流側から見てみます。左がさっきの昆陽川、右が上坂部川です。逆にすると合流点であるかのようにも見えますが、写真手前が上流側です。合流点ならば、例えどんな小河川であろうと下流部に行けばどういう形態のものであれ普通に見られると思いますが、このような都市河川が街中で分岐して流れるというのは結構珍しい例ではないでしょうか。しかもこの河川、一旦此処で別々の流れとなるものの下流部で再び合流するという、まるでヤッターマン最終回のような仕様になっております。特殊な流れを辿る河川ですが、その割りに水量はあまり多いとは言えず..しかしやはりこれは洪水対策なのでしょう。このタイプの都市河川の常として、普段は殆ど水が流れなくても雨天時には大増水するという事が往々にしてございます。昆陽川の流路はかなり屈曲を繰り返しておりますし、しかも付近は住宅密集地−となれば増水すればかなり危険。しかしそう考えると、昆陽川はともかく上坂部川は後から付けられた河川なのかも知れません。

 

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 分岐点のアップ。河川を2つに分ける堅牢且つ無機質な護岸が印象的。左が昆陽川で奥に見える石造の橋は新御園橋(しんみそのばし)、その向こうの白いコンクリートは近年になって付け替えられた阪急電車の高架(以前は地上を走っておりました)。川は高架の下をトンネルで抜けております。橋の下のコンクリートだけが陽に灼けておらず、白いままなのが分かります。何だか水着の日焼け跡みたいです。。

 

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 昆陽川アップ。絶壁状態の護岸は降りたら最期、上がれない事を否応無く物語っております。結構な存在感で、何人の侵入をも硬く拒否しているような無言の意思を感じます。きっと大阪城の石垣よりも難攻不落なんじゃないでしょうか(大袈裟)。。

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 ↑分岐点拡大。ちょうど水が昆陽川と上坂部川とに分かれるところ。手前はもう上坂部川と名前を変える訳です。上坂部川の方が川幅が狭くなっているのが分かりますね。こうして水が2つに別れて逝く光景は何だか感動的です。ゴミが引っかかっているのが気になりますが。。。

koya12.jpg (130471 バイト)川面のアップ。取り敢えず水は澄んでいました。。

 

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 昆陽川・新御園橋全景。橋は'70年3月架設のようです。旧いタイプの、味のある橋です。銘板はやはりこの位置に入っているのが一番しっくり来るように思います。橋の下には高架を抜けるトンネルが見えております。

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 新御園橋の上から見た昆陽川のトンネル。橋を過ぎてすぐにトンネルに入るのですが、何故かトンネル穴は2つありまして、此処でまたまた分流するという訳です。。これは橋の強度を守る為でしょうか..即ち大きな空洞を1つ空けてしまうとその分だけ強度が脆弱になってしまうので、小さめのトンネルを2つにしたという事かも。。

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 トンネルのアップ。枯れ葉に混じってゴミが散乱しております。。水量があまり無いので、どうしてもある部分で堆積してしまうようです。

 

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 こちらは上坂部川に架かる御園橋(みそのばし)から分流点を見たところ。昆陽川本流とは違って、流路がコンクリートで中央に区切られております。河床部のこのスタイル、都市河川にはよく見られるのですが、どういう目的でこのようにされているのでしょうか。やはり河床部を歩けるようにという事なのか。。

 

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 御園橋から下流部を見ています。このちょうど上が阪急電車の高架です。此処から若干川幅が狭くなり、流路の屈曲具合といい、模様の入った旧いコンクリート護岸といい、ナカナカに良い佇まいを見せております。個人的には好きな雰囲気ですね。この先の下流部は改めて別項で取り上げたいと思います。この部分の護岸コンクリートだけが白く新しいのは、以前は地上を走っていた阪急電車の線路を近年になって高架に付け替えた際に工事されたからです。高架が出来る以前はきっとこの場所に小さな鉄橋が架かっていたのでしょう。それに併せて橋も新しく架け替えられており、銘板もピカピカの新しいものになっています。この橋と同じ道に先ほどの昆陽川に架かる新御園橋がある訳ですが、昆陽川の方が本流と思われるのにも関わらず、本流の橋に"新"と付くのは妙ですね。歴史的には御園橋の後で新御園橋が出来たと考えるのが自然でしょうけれど、そうなると上坂部川が後から付けられた河川であるというのは間違いなのか。それに橋が新たに架け替えられた現在、御園橋よりも新御園橋の方が旧いというのも何だかヘンで、ちょっとしたパラドックスを覚えます。

 

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 御園橋全景。分流点付近から下流方向を見て撮影しています。阪急電車の高架と共に、ちょうど橋の手前までのコンクリートが白く新しいのが分かります。新しい銘板は黒地に金文字でとてもシックなのですが、どうにもまだ新しすぎて如何にも取って付けたような雰囲気..あと20年くらい経つと味わいが出るでしょうか。。

 

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 ちょうど分流点の突端に建っている謎の建物。水色に塗られた扉は固く閉ざされ、厳重に施錠されております。この鍵は一体いつ開かれるというのか。そして中には一体何があるのか..この分流点にどんな秘密が??

..おそらくは洪水対策用の土嚢か何かでしょうが。。

 

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 河川分流点より昆陽川上流を臨む。またしてもスゴイ屈曲..此処で分流してまた屈曲となるのですから、昆陽川本流は此処でS字クランクを辿るという訳です。こうして見ると川幅が結構ありますね。しかしこの屈曲と川幅は..増水すればかなり恐ろしい事になるのでは。。並行する道路と河川との間に柵が無いのも今時珍しいかも。こんな場所に果たして必要か?と思われるような処にまで厳重な柵が施されたりすることもあるというのに。。

 

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 先ほどの屈曲の先を見たところ。昆陽川上流に向かって撮影。此処から先は並行する道路が行き止まりとなっており、このままでは河川の姿を見ることが出来なくなります..ので取り敢えず場所を変える必要アリ。右の護岸に別の水路からの流れが合流しているのが見えます。

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 合流点拡大。地図で見てみるとこの小水路は少し行った処ですぐに行き止まりになっているようです。一応水がちゃんとあるようなのですで、源流がどうなっているのか気になるところです..何となく想像はつきますけれども。次回詳細な調査をしたいと思います。

 さてこの昆陽川、この先の上流部はどうなっているのか?そしてこの僅かな水は何処から集まって来るのか?また此処で分流した後はそれぞれどのような流れとなるのか..分流点に関するレポートはこれで終わりますが、引続き探索を続けて参りたいと思います。

昆陽川分流点・完

 

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